「力を抜こう」としない方が、音はよくなる|打楽器演奏と脱力の話

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コラム

ドラムやパーカッションの演奏で、
「叩いているとどうしても力が入ってしまう」
「力を抜こうとしても抜けない」
というのは、よくある悩みではないでしょうか。

「力を抜く」ということに関しては、運動力学、スポーツ科学、演奏と身体の実践理論などでも研究されていて、これらの研究結果と現場(演奏者)の知見の間には多くの共通点があります。
その内容には、「力の抜けた演奏をしたい」と願う人にも役立つものがあります。

そこでここでは、科学的な研究結果と現場で言われていることの両方を整理して、「力の抜けた叩き方」を身につけるのがなぜ難しいか、上手な人はどうやっているのか、そして、どうすれば「力の抜けた叩き方」を身につけることができるのかをまとめました。

力が抜けた演奏では、何が違うのか

打楽器の演奏に限らず、他の楽器や多くのスポーツにおいて、上手な人ほど力が抜けていて、無駄な動きがない、というのはよく聞く話です

一方、そこまで上達していない人は、力が入って余分な動きも多いといいます。
上手な、熟達した人たちは何をしていて、そうではない人とは何が違うのでしょうか?

実はこの問題については、打楽器、ピアノ、弦楽器、スポーツの打撃動作などで研究されていて、多くの分野で熟達した人の動作には共通点がみられるのだそうです。

熟達者の動作にみられる共通点
  • 打点での接触時間は最短
  • 力は叩く瞬間(打点)だけで使う
  • エネルギーが打点に集中するフォーム
  • 叩いた後に余計な動きがない(押さえつけたり、ブレーキをかけない

※打楽器では、ミュートしたり音色をタイトにコントロールする場合などを除く

つまり、打点での接触時間が短いのに、力がしっかり伝わるしくみになっているということです。

打楽器の場合、打点での接触時間は特に短く、およそ0.003〜0.015秒程度と言われています。
(熟達した人の場合)
本当に短い、瞬間的な接触です。
この接触時間の短さは、打面の振動を邪魔しないことで音量や音圧に直結するし、音の立ち上がりや抜けの良さなど音色にも影響します。

これに対し、初心者やそれほど熟達していない人の動作は、次のようになっています。

熟達していない人の動作
  • ずっと力が入っている
  • 打面との接触時間が長い
  • エネルギーが打面にうまく伝わっていない(エネルギー効率が悪い)
  • 接触した後、余分な動きをしている(打面を押さえる、ブレーキをかけるなど)

この場合、力を使っているのに、打面にエネルギーがうまく伝わらず、接触時間も長くなるということです。
このため、音がこもる、音の抜けが悪い、音が前に飛ばない、音が重いなど音色も悪くなります。

さらに、力が入っているとリズムが乱れる、テンポアップが難しいなどの問題にもつながりやすい。

でも多くの人が、力が入るといいことがないのはわかっているけど、力を抜こうとしてもやめられないのが実際のところですよね。

演奏を続けると、なぜ力が入ってしまうのか

では、演奏をしていると力が入るのはなぜでしょう?

実はこれは、脳の働きによって起こるものなんです。

人は同じ動作を繰り返していると、最初は問題なくできても、そのうち疲れてくるし、少し失敗する場合も出てきます。
そうすると、疲れによる微細なズレや失敗が気になってくる。
その結果、無意識のうちに“安定させよう”、”失敗しないようにしよう”として力を足していく…。

脳にはそういう性質があるというのです。

力を入れることによって、動きの自由度を減らしてコントロールしようとしているわけですね。
特に、まじめにちゃんとやろうするほど、”失敗したくない”と言う気持ちが強くなり、力も入りやすいのだとか。

これは、ドラムやパーカッションの演奏だけではなく、ほかの楽器やスポーツ(ゴルフのスイングなど)でもよく見られることです。
また、脳の仕組みなので、今は上達している人でも、最初はみんなが通る道といえます。

脱力しようとすると逆に力が入るのはなぜ?

では、どうすれば力を抜くことができるのか?
実際、力を抜こうとしてもうまく抜けない、逆に力が入るような気がする…と思う方も多いのではないでしょうか。

次は、力を抜こうとしてもできないのはなぜなのか?
それは次のような、脳の仕組みのせいなのです。

力を抜こうとしてもうまくいかない理由

脳は「力を抜く」ということを、直接命令出来ないから。
このため「力を抜け」と言われると、脳は別の筋肉を使って力を入れることを止めようとする。

具体的には、力が入っている筋肉と反対の動きをする”拮抗筋”(対になっている筋肉)に力を入れる動きをします。
こうすると、もともと力が入っていた筋肉の力は抜けます。

でもそうすると、そのうち「あっ、別の筋肉に力が入ってる」と気づくかもしれません。
すろとまた「力を抜かなきゃ」と焦ってくる。
そのうちに、脳が「大変だ!動きを安定しなきゃ」と判断すると、両方の筋肉に力を入れたり、さらにその周りの筋肉も動員して、力を入れて動きを安定させようとするということも起こります。

結果的に、なんだか全体に力が入ってしまう…ということにもなります。

これが、「力を抜こうとしてもできない、かえって力が入る」の正体です。

打楽器で力が入ってしまう原因は、レベルによって違う

ドラムやパーカッションで力が入ってしまう原因は、熟達度によっていくつかあります。
例えば、初心者と、ある程度上達してきた人では、原因が異なります。

ここでは、初心者と経験者の場合によくあるパターンを紹介します。

経験者|気づかないうちに「力が必要な叩き方」になっている

ある程度上達してくると、自分では脱力していて、フォームもそんなに悪くないし、音量も出せる。
そんな状態にになってきます。
でも同時に、人によっていろいろな癖が出てくる頃でもあります。

例えば、首や肩が固まる、手首が固い、スティックを握りすぎる、背中が固まっているなど…

自分では力を入れているつもりはないのに、疲れやすい、肩が重くなる、また、叩いてるときのフォームが何か固い…と言うこともあるかもしれません。
また、これは音が重い、抜けが悪い、グルーヴが重いなどの悩みにもつながります。

このような場合、原因のほとんどは「力を使わないと成立しない叩き方になっているから」だと考えられます。
例えば━、

  • 関節を固めて安定させている
  • 自然なリバウンドを抑えている
  • タイミングが合っていないので、力でコントロールしている

こうなっていると、全体の叩き方の問題を、肩や腕や手首など…どこかに力を入れることで解消する必要が出てきます。

これが、ある程度上達したときによくみられる原因です。

初心者|力を入れないと音が出ない気がする

初心者の場合は、経験者とは状況が異なります。
始めたばかりなので、そもそも叩き方を知らないし、自分の叩き方もまだできていない。

叩き方を知らないから、力を入れないと音が出ないような気がして、力の入った叩き方になる。
これが、多くの初心者に見られる叩き方です。

力の抜けた演奏をするために効果のあること

ではいよいよ、どうやったら力を抜いて演奏できるのか?についてみていきます。

力の抜けた演奏ができる人がやってきた練習

力の抜けた演奏ができる人は、「力を抜く」練習をつんだわけではないといいます。

では、どういう練習をしてきたのでしょうか?
それは、下記の通りです。

力の抜けた演奏をする人がやってきたこと

疲れずによい音が出せて、安定して演奏できる方法を探したら、結果的に、力が入らないやり方に行きついた

力を抜こうとしたわけではなく、よいパフォーマンスが出せる演奏方法を探したということ…。
これは、多くのプレイヤーが語っています。

例えば、「若いころは力任せに叩いていたけど、ある時”その叩き方だと音がちゃんと鳴らない”ことに気づいた。それから、いい音がだせるやり方を探すようになった。力を抜こうと思ったわけじゃない」
このような話を聞いたことがあるかもしれません。

そして、科学的な研究でもこのやり方が正しいことが裏付けられているそうです。

力の抜けた演奏で、実際に起こっていること

では実際に、熟達した人の、力の抜けた演奏では、どういうことが起こっているのでしょうか?
代表的なものを下記にまとめました。
これは打楽器の種類によらず共通しているそうです。

力の抜けた演奏で起こっていることの例
  • 叩く時のスピードは打点で最大になる
    ずっと同じスピードではない
  • 音量が大きくても小さくても、打点での”当て方の質”は変わらない。
    小さな音量でも、振り幅は変わっても、ある程度のスピードが保たれている
  • 打点以外で、余分な力を使っていない
  • コンパクトな演奏フォーム
    大振りになりすぎず(無駄な自由度がない)、関節が支点として自由に動く
  • 打点で、手やスティックに体重が乗っている
    体の重心や軸と、肩や腕、手、スティックが一体となった動き
  • 打点での接触時間は短く、自然にリバウンドする
    押さえたり、打点後に持ち上げたりの余分な動きをしていない
    (ミュートやタイトな音にするためなどの奏法を除く)

この内容を知っていると参考になるかもしれません。
ただ、打点でスピード最大にしよう、コンパクトなフォームにしようなど狙ってやるのは、力が入ったり、動きが固くなるなどの原因にもなりやすいし、たくさんある原因のひとつを直すことで、本当に力の抜けた叩き方をつかめるかはわからず、最善手とは言えませんね。

経験者|力を抜くためにできる練習

力の抜けた叩き方を身につけるためにできるのは、「力を入れなくても、楽に叩ける叩き方を見つける」ことです。

もちろん、楽器の種類やその人の体格~手の大きさや腕の長さ、関節の柔らかさなど~、音楽ジャンルによって叩き方は異なるでしょう。
ただ、楽器が違っても、年齢や体格が違っても、多くの場合に共通した要素があります。
その要素は次の2つです。

結果として力の抜けた叩き方になるためにできること
  1. 「小さな音で成立する叩き方」を探す
  2. 打点の後で何をしているかを単発で確認し、自然なリバウンドを拾う動きをつかむ

これだけ?と思うかもしれませんが、そうなんです。
これは、力を抜こうとしないで、結果として力が抜けるための核心になるもので、この中に必要な動きをつかむための要素がほとんど含まれています。
(ただし、これさえやればすぐに力が抜けるものではありません。
上手な人がやってきたように、時間をかけてやり方を自分でつかんでいく必要があります)

このあと、この2つについて説明していきます。

※対象は、まるっきりの初心者ではなく、すでに自分の叩き方が出来ている経験者で、力が入ってしまうのを何とかしたいと思っている方です。
※念のためですが、最初にやることは、「力を抜こうとするのをやめる」ことです。

肩の力を抜く効果は?

「力入っているよ」「肩の力を抜いて」
と言われて、”ふ~っ”と息をして、肩の力を抜くことはありませんか?
あれの効果はないの?と思ったので、調べてみました。

調べた結果、肩の力を抜くことで、リセットしたり、一時的に緊張のない状態を作るという効果はあるようです。
ただ、持続性はなく、力を入れた叩き方をしている場合は、叩いているうちに緊張が戻ってきます。

まあ、そうだろうなと思いますよね。
でも、演奏前に緊張をほどいてリセットする方法としてはよさそうです。

小さな音で「成立する叩き方」を探す

ひとつめは、「小さな音で成立する叩き方を探す」です。

普段、力の入った叩き方でその音量を出している場合、それは力を入れることでその音量が出せる叩き方になっているはずです。
でも、小さな音量でいいと考えて叩いてみてください。
自然と力が抜けて、力をあまり使わない叩き方になるのではないでしょうか。

小さな音量で叩こうとすると、それだけで力をあまり使わない叩き方がどんなものか体感できるはずです。

ただ注意しないといけないのは、これはそっと叩くとか、小さく叩くということではないということ。

小さな音を出すとき、プロの奏者は決してスピードを抑えてそっと叩いているわけではなく、ある程度のスピードを保ったまま叩いています。(振り幅は小さいかもしれないがスピードを殺していない)
これはたぶん、多くの打楽器で同じだと思います。

ことさと
ことさと

私は、カホンのレッスンでそれを教わりましたが、知り合いのドラマーの方は、ある有名ドラマーにジャズを習いに行ったとき、
「小さな音量で演奏したい時もスティックが打面に当たるときのスピードは保つ」
と教わったと言ってました。
それで、”どの楽器も同じなんですね~”と盛り上がったことがあります🌝

小さな音で叩いたときに、もしそっと叩いてしまうようなら、スピードを落としすぎないことを気を付けるといいかもしれません。
うまくできているかどうかは、音色(小さくてもちゃんと鳴っているか)やリズム(安定しているか)などのアウトフィット(結果)で確認します。

小さな音で成立する叩き方がある程度できてきたら、少し大きな音でやってみて、同じ叩き方の延長で大きな音が出せるかを確認します。
小さな音と大きな音を行き来して、繰り返しながら力の抜けた叩き方をつかんでいきます。

ことさと
ことさと

私は、カホンのレッスン中に「音が大きすぎるんじゃない?そんなに叩かなくてもいいよ」と指摘されたことがあります。
先生と比べてみると、先生より大きな音で叩いてました!
それで、そこまで大きな音を出さなくていいと思って叩いてみると、それだけで少し力の抜けた叩き方になりました。

思い込みで”大きな音量で鳴らさなきゃ”と思っていると、力が入りすぎる原因になっていることもあるかもしれまん。

打点の後で何をしているかを単発で確認する

力を抜くためにできること、2つめです。
力みの原因のほとんどは、打点後にあるそうです。
よく見られるのは、打点の後で押したり、自然なリバウンド以上に動かそうとするなどの叩き方。
このような叩き方には、次のようなデメリットがあります。

  • 打面の振動が途中で止められて鳴りが悪くなる
  • 小さな音での演奏が難しくなる
  • 不要な力を使うので、タイミングが安定しない、疲れる
  • 余計な動きが増えるため、力が入りやすい

実際に打点の後(叩いた後)に何をしているかを知るためには、単発でやってみて動きがどうなっているかを見るのがすぐできる方法です。
手順は次の通りです。

  1. 単発で叩いて、打点の後に自分が何をやっているかを観察する
    動きを押さえていないか?止めていないか?次の動きの準備をしていないか?などをチェック
  2. 自然なリバウンドにまかせた動きをやってみる
    その時の手に帰ってくる反動や、体に伝わる感覚をつかむこと
  3. その感覚のまま、ゆっくり連打してみる
  4. 少しずつ連打の回数やテンポを上げていく
    感覚が保てなくなったら、単発での確認にもどる

この手順で、余計な動きをしない叩き方をつかんでいきます。

連打(普通に叩くこと)にもどしたり、テンポをあげたりすると、もとの叩き方に戻ってしまうかもしれません。
”小さな音で叩く練習”と同じように、これも単発と連打を行き来しながら調整することが必要です。

初心者|将来力の抜けた演奏を目指しやすいように

初心者の場合は、上で説明した「経験者のための方法」は当てはまりません。
まだ、どう叩くとどういう音がでるのかもわからない状態がほとんどだと思います。

その場合、最初はある程度力が入っていてもいいので、安定して叩けることを目指す方がいいようです。
ただ、後から、力の抜けた叩き方を探そうとするときに、大きな阻害要因にならないように注意すべきポイントがあります。

まず、初心者の場合は、次のような考え方が挙げられます。

  • ちゃんと当たって音が出ることを優先する
    小さな音を出す練習は初心者には難しい
  • 安定したテンポで演奏できる叩き方を身につける
    これが出来ていないと、力の抜けた叩き方の練習をすることができない
  • 初心者はどこかに力が入る、疲れるのは当たり前なので、気にしすぎない。
  • やはり、先生のお手本を見ながら一緒に叩いてみるのがよい

そして、気にした方がいいポイントは次の通りです。
このあたりができていれば、「力の抜けた叩き方」を見つけるための練習にも無理なく入ることができるはずです。

初心者のチェックポイント
  • 叩いた後、自然にリバウンドしているか
  • 大振りすぎないか
  • 極端に力が入っている場所がないか
    見るからに、肩や腕に力が入っている、スティックを握りしめているなどは、やはり直した方がいい
  • 動きがぎくしゃくせず、”一連の流れ”になっているか

やはり当然ですが、見てすぐにわかるところは直した方がいいということです。

これ、初心者でなくても経験者でも自分のチェックに使えるような気がします。
どうでしょう?

結局、どんな音を出したいかを知ることが大事

経験者のための力の抜けた叩き方を見つけるための方法、どちらも、結構手間がかかって面倒だし、根気がいりそうな作業ですよね。

調べていて思ったのですが、これって自分がどんな音を出したいのか?どんな演奏をしたいのかを知らないと、突き詰めていけないのでは、と感じました。
上手な人は、そういうことをわかった上で練習を積んできたのだろうな。
出したい音がわかること自体も、才能かもしれません。

自分を考えると、私は「先生のような演奏ができるといいな、、」くらいで、そこまで出したい音とか、やりたい音楽がわかっていないです。
これだとそれなりの突き詰め方しかできない気がします。

それでも、その時わかる範囲でやっていけば、また少し進んだところでわかってくることもあるだろうから、私は私でマイペースで取り組んでいこうと思いました。

まとめ

楽器の演奏や多くのスポーツで、同じ動作を繰り返すと力が入るようになるのは、脳と身体の仕組み上避けられないことです。
また、力を抜こうとしても抜けない、かえって力が入ることも、脳が「筋肉の力を抜く」ということを直接命令できないために、当然起こること。

力の抜けたパフォーマンスをマスターした、熟達した人は、「力を抜こう」と思うのではなく、「良いアウトフィット(結果)を出せる方法を探す」ことで、結果的に力の抜けた演奏方法にたどりつきました。

この記事では、打楽器の演奏で「力の抜けた叩き方」を身につけるために役に立つ方法を紹介しました。
どれも、やればすぐにできるというものではなく、時間をかけてつかんでいく必要のあるものです。
ただその過程で、自分の出したい音ややりたい音楽を一緒にみつけていけるものかもしれません。

この記事が、力の抜けた演奏をして、音楽を楽しみたいと思う方の参考になると幸いです。

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