グルーヴ感って結局なにか? 仕組みはわかってないけど、生まれやすい条件はあるらしい

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コラム

グルーヴ感のある演奏に憧れます。
私はドラムとパーカッションを始めて9年、レッスンで「今の、グルーヴ感出てましたね」と言われることもあるけれど、グルーヴ感ってわかってるようで、実際のところわかっていない。

調べてみると、グルーヴ感は音楽心理学や認知科学でかなり研究されていて、定義もあることがわかりました。
ただし、やはり狙って出せるものではないらしい——これはイメージ通りと言えます。
それでも、グルーヴが生まれやすい演奏の条件はあるようです。

この記事では、そんな「グルーヴ感」について調べてわかったことを、科学的な知見と、現場の演奏者が実感していることの両方からまとめてみました。

グルーヴ感とは

グルーヴ感のイメージ

グルーヴ感とは何かというと、Wikipediaには、
”リズミカルな「ノリ」や「感触」を指し、特にリズムが推進力を持ち、身体を動かしたくなる感覚を作り出すもの”
…と説明されています。

「推進力」「身体を動かしたくなる」——なんとなく頷ける気はしますが、まだ漠然としています。

実際に演奏をしている人たちがなんと言っているかを調べても、答えはさまざまです。

  • グルーヴに明確な定義はない。主観的なものだと思う。
  • リズム・テンポ・アクセントなどが微妙に絡み合って生じるもの。
  • 言葉で説明できない、体で感じるもの。
  • うねりのように感じるもの。

「波に乗っている感じ」「止められない推進力」「音楽に運ばれている感じ」
という表現もよく聞くと思います。

スティーヴ・ガッドは、グルーヴを時間の流れそのものを形づくることだと語っているそうです。
これはかなり哲学的で、難しい。
ただ、「うねり」「止められない推進力」という感覚は、演奏していても、ライブで聴いていても、確かにあると感じます。

音楽心理学における定義

グルーヴ感は、音楽心理学、認知科学、神経科学、物理学など複数の分野で研究されています。

音楽心理学では、グルーヴ感とは「身体がリズムの流れに同調していて、飲み込まれる、抗えないなどと感じるもの」と表現されます(Janata, Tomic, & Haberman, 2012)。

つまりポイントは、グルーヴ感が気分の問題ではなく、体の反応として捉えられている、というところ。

それでは、こうしたグルーヴ感はどんな演奏から生まれるのでしょうか。
実はこの部分についても、研究がかなり進んでいるとのこと——ただし、研究者の間でも意見が分かれている部分があるようなので、それについても後で触れていきます。


(参考文献)
1)Janata, P., Tomic, S. T., & Haberman, J. (2012). The neural basis of groove. PLoS ONE, 7(1).
※代表例。他にも多数の報告があるようです。

グルーヴ感が生まれる仕組み

グルーヴ感がどうやって生まれるのかについては、音楽心理学ではいくつかの説があるようです。
よく言われるのが、「マイクロタイミング」と呼ばれる、ごくわずかなリズムのズレが関係している、という説です。

マイクロタイミングによりグルーヴ感が生まれるという説

グルーヴ感がどうやって生まれるのかについて、音楽心理学ではいくつかの説があります。
よく言われるのが、「マイクロタイミング」と呼ばれる、ごくわずかなリズムのズレが関係している、という説です。

正確に演奏された音(例えばコンピュータで作られたクオンタイズされた音)と、人の演奏を比べると、人の演奏にはミリ秒単位(0.001秒単位)のごくわずかなタイミングのズレがあります。
このズレのことをマイクロタイミングと呼びます。

こうしたマイクロタイミングのズレに一定の周期性があると、音量や音色のわずかな揺らぎと組み合わさって、グルーヴ感が高まる。
この研究がよく知られています。

これは、演奏に何らかの揺れがある時に、グルーヴ感が出るように感じる…、という実際に演奏したりライブで聴いたときの感覚とも重なる部分があり、個人的にはそれなりにしっくりくるように思っていました。

ただし、このテーマはまだ結論が出ていない

しかし、上で説明したマイクロタイミングとグルーヴの関係については、研究者の間でも意見が一致していないそうなのです。
初期の研究では「ズレがグルーヴを高める」という結果が支持されていたけれど、その後の研究では逆に、ズレがグルーヴに影響しない、あるいはむしろグルーヴを損なうという結果もあるそうです。
中には、完全にクオンタイズされた(正確な)演奏と、”人間らしい”ズレのある演奏とで、聴き手のグルーヴ評価はほとんど変わらなかった、という研究もあるのだとか。

これも確かに、DTMで作られたデジタルっぽい曲でも、グルーヴ感を感じることがある気がするなぁ…
という感覚に一致するように思われます。

ですから、「ズレがあるからグルーヴが生まれる」と単純に言い切れるわけではなく、まだ研究の途上にある、結論の出ていないテーマだと言えるのでしょう。

この記事では、いくつかある仮説のひとつとしてマイクロタイミングについて紹介しました。


参考文献

  • Frühauf, J., Kopiez, R., & Platz, F. (2013). Music in motion: The dynamics of musical groove.
  • Senn, O., Kilchenmann, L., von Georgi, R., & Bullerjahn, C. (2018). Groove and microtiming.

バンドのグルーヴ感

賛否あるマイクロタイミング説ですが、ここではあえてバンド演奏に当てはめて考えてみます。
個人的には、これが感覚的にいちばんしっくりくるように感じました。
いくつかある仮設のひとつとして読んでもらえたらと思います。

グルーヴ感は、ドラムやパーカッション単独の演奏でも生まれますが、バンド演奏になると、また違う次元の、強いグルーヴ感が生まれることがあります。
ライブで、演奏を聴いているうちに、身体が持っていかれるような感覚に陥ったことがある方もいるのではないでしょうか。

「マイクロタイミング―揺らぎ」の考え方をバンドに当てはめると、それぞれのメンバーが”同じ方向性”の時間的な感覚を共有しながら、楽器ごとに異なる揺らぎを持っていて、それらが重なったときにグルーヴ感が生まれると考えられます。

面白いのは、楽器によって周期が違うということです。
リズムを刻む楽器、フレーズを弾く楽器、メロディーを奏でる楽器、それぞれが異なる周期を持ちながら、同じ場を共有して揺らいでいる——狙っているわけではなく、互いの演奏に反応して感覚的に同調している、というイメージです。

こうして、バンド演奏で大きなグルーヴの場ができたとき、観客だけでなくプレイヤー自身も、流れに引き込まれて止められない感じになる―揺らぎで考えると、これがよく説明できるような気がします。

ノリとグルーブ感

ところで、グルーヴと似た言葉に「ノリ」があります。「ノリがいい」「ノリが悪い」とよく言いますね。

「ノリがいい」というときは、楽しい、テンションが合う、気分が乗っているなど、心理状態を表す言葉として使われます。

一方グルーヴ感は、ここまで説明してきたように、揺らぎや体の同調といった要素と結びつけて説明されることが多く、少し性質の違う現象です。
ノリが「気分」の話だとすれば、グルーヴ感は「体の反応」の話、と言えるかもしれません。

面白いのは、両者の関係です。
演奏現場では、「ノリを出そうとすると、かえってグルーヴがなくなる」という声は多いようです。
おそらく、ノリを出そうと意識的に操作することが、グルーヴに必要な無意識の体の同調を邪魔してしまうと考えられます。
逆に、グルーヴがあれば、ノリはあとからついてくるものと考える人が多いです。
狙わず、ただ無心に演奏するのがよさそうです。

グルーヴが生まれやすい演奏の条件

これまで見てきたように、グルーヴがどんな仕組みで生まれるのかは、まだはっきりとはわかっていません。
グルーヴを狙って出そうとしてもうまくいかない、ということも、研究でも現場でよく言われるそうです。

では、グルーヴを出すのは、たまたまうまくいったときの結果を待つしかないのか?というと、そんなことはなく、
結果的にグルーヴが生まれやすい演奏の条件というものは、演奏現場でも研究でもある程度共通して認識されています。

心理学や認知科学、マイクロタイミングの研究では、次のような状態のときにグルーヴが生まれやすいと報告されています。

グルーヴが生まれやすいとされる条件

  • 力が入っていない(筋肉・関節が自由に動きやすく、無意識の体の反応が表れやすい)
  • 揺らぎを出そうとしていない
  • 音をコントロールしようとし過ぎていない
  • 全体の音を聴いている(細部に集中しすぎていない)

面白いのは、これがドラマー自身の言葉ともかなり重なることです。グルーヴが生まれたときの演奏を振り返って聞くと、次のような共通点がよく挙げられます。

多くのドラマーに共通した言葉

  • 何かをしようとしていなかった
  • ただ、ビートを刻んでいただけ
  • ただ呼吸している感じだった

研究側の知見と、現場のドラマーの実感が、「狙わない」「力を抜く」という点でほぼ一致しているのは興味深いところです。

結局、こうすればグルーヴ感が生まれるという方法はなくて、力を抜いて、狙わないのが大事という結論になってしまうのですが、
でもこれは、これはグルーヴを生むために何もできないという話でもない気がします。

普通に上達を目指して練習を重ね、音楽を表現しようとして、体が自然に動くようになった先に、グルーヴ感は訪れる―当たり前のことのようですが…
だけど、そんなものかもしれません。

何かに合わせるのではなく、リズムの流れを作ること

前章で挙げた条件の中に、「音をコントロールしようとし過ぎていない」「全体を聴いている」というものがありました。
これに近いこと、もしかして関係あるかも?と思うことを、実際にレッスンで体験したことがありました。
小さな出来事なのですが、最後にご紹介します。

私は普段のレッスンでは、曲の音源を使って演奏し、それを先生に見ていただいています。
習い始めて2、3年頃まで、私は曲のビート(拍)を一つ一つ聴いて、できるだけ正確に音を合わせようとしていました。

でもあるとき、先生に「ひとつひとつの音を聴かないで、流れを感じて演奏して」と言われました。
言われたとおりにやってみると、その方法はうまくいきました。

つまりこれは、一音ずつ合わせに行くと、かえって全体の流れが悪くなる。
それより、曲の流れを感じながら、その流れの中で演奏する方がいい。
その方がリズムが回って結果的に良い演奏になる—、ということらしいです。

この出来事を今思い出したのですが、
全体の流れを感じながら演奏したことで、それまで細かな音に集中していた感覚が変わり、身体の反応がスムーズになって、グルーヴにつながる演奏の条件に近づくかもしれない。
そんな風に思いました。

まとめ

グルーヴという、よく聞くけど、実際どういうものかはあまり知られていない現象について、見てきました。

グルーヴがどんな仕組みで生まれるのかは、実はまだはっきりとはわかっていません。
それでも、狙って出そうとするとうまくいかないこと、そしてグルーヴが生まれやすい演奏の条件については、研究でも現場でもある程度共通した認識があるようです。

仕組みを理解したからといって、すぐにグルーヴを出せるようになるわけではありません。
ただ、力を抜いて、コントロールしすぎず、全体の流れを聴く——そうやって自分が流れを邪魔するのをやめたとき、ふと気づくとグルーヴが生まれている。
そういうものなのかもしれないと思いました。

この記事が、「グルーヴって結局なに?」「どうすればグルーヴ感が出るの?」と思っている方の、何かのヒントになれば嬉しいです。

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