音楽をやっていると、グルーヴ感があるとかないとか、よく耳にします。
でもグルーヴ感ってなんでしょうか?
なんとなくこんな感じのもの、と思っているけど、はっきりとは説明できないという方も多いかもしれません。
感覚的にしか言えないような、主観的なものなのでしょうか?
グルーブ感を生む演奏ってどうすればできるのか?ということも気になります。
この記事では、そんな「グルーヴ感」について、グルーブとは何なのか?定義は?どうすれば出せるのか?など紐解いてみました。
実はグルーヴ感は科学的にはかなり研究されていて、定義もあるのです。
でも、狙っては生み出せない、けれどもグルーヴ感が生まれやすい演奏の条件がある、ということもわかっています。
「グルーヴって何?」「どうやったらグルーブ感が出るの?」と思う方の参考になると嬉しいです。
グルーヴ感とは

グルーヴ感とは何かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。
リズミカルな「ノリ」や「感触」 を指す。
特にリズムが推進力を持ち、身体を動かしたくなる感覚を作り出すもの
たしかに、そんな感じのものだという気はする。
でもちょっと、漠然とした感じです。
では、演奏している人たちはどう思っているのでしょうか?
調べてみると、人によってそれぞれとらえ方が違うようです。
例えば━
- グルーヴに明確な定義はない。主観的なものだと思う。
- リズム・テンポ・アクセントなどが微妙に絡み合って生じるもの。
- 言葉で説明できない、体で感じるもの。
- うねりのように感じるもの。
グルーヴはうねり、渦、飲み込まれる感じという表現も多く、例えばグルーヴとうまく同調したときには、
「波に乗っている感じ」「止められない推進力」「音楽に運ばれている感じ」という人もいます。
スティーヴ・ガッドは、グルーヴを「時間の流れそのものを形づくること」と語っているそうです。
こうなると、かなり哲学的で難しい雰囲気になってきますね。
ただ、「うねり」「止められない推進力」といった感じは、ライブに行くと感じることがあります。
わかるという方も多いのではないでしょうか。
例えば、演奏された音楽を中心に渦が広がって、そのエネルギーに飲み込まれる感じがする、などのように…。
実は、グルーヴ感については、音楽心理学、認知科学、神経科学、物理学でかなり研究されています。
音楽心理学ではグルーヴ感とは、「身体がリズムの流れに同調していて、飲み込まれる、抗えないなどと感じるもの」と表現されています。
つまり、体の反応であることがポイントです。
ここで、リズムとグルーブの違いについて。
リズムは、ひとつひとつの拍がどう刻まれているかを見たもの。
一方グルーヴは、リズムの流れで捉えた時に、リズムの揺れや音の強弱によって生まれる現象を指します。
つまり、リズムは拍がどう置かれるかを見ているのに対し、グルーヴはもっと大きな流れや場で見たときに現れるものという違いがあります。
では、このようなグルーヴ感はどのような演奏をすれば生まれるのでしょうか。
実はこの部分についても、研究によってかなりのところまで説明できるようになっています。
グルーヴ感が生まれる仕組み(科学的な視点から)

グルーヴ感は、科学的な研究ではこのように説明されています。
グルーヴ感は、演奏されるリズムに、時間的な揺らぎと音量・音色の揺らぎがあり、それが周期性をもって繰り返されている時に生まれる。
つまり、リズムの中に揺らぎがあって、さらにその揺らぎに周期性があるときに生じるということ。
ドラムやパーカッションを演奏する方は、「何か揺らぎがあるとグルーヴ感が生まれる気がする」と感じる方も多いかもしれません。
その場合その通りということですね。
では、ここで書かれている”時間的な揺らぎ”、”音量・音色の揺ら”について、もう少し詳しく見ていきましょう。
ひとつめの”時間的な揺らぎ”とは、リズムを構成する一つ一つの音が、拍に対して微妙にずれているという状態を指します。
例えば、テンポ(タイム感)はキープしながら、毎回ある音がほんの少し後ろ(または前)にいる、と言う状況。
しかもそのずれ方が、毎回同じ傾向を保ったまま(同じ方向に、ある範囲内で)、少しずつ変化しているときにグルーヴ感が生まれるのだとか。

グルーヴ感につながる”ずれ”の大きさは、音楽の種類にもよりますが、おおよそ0.005秒~0.02秒程度のものと考えられているようです。
とても、狙ってできるようなものではないですね!
また、音量や音色の揺れについても、同様です。
同じリズムパターンを演奏していても、音量も音色も繰り返しごとに微妙に変化するはずです。
この変化が周期性をもつと、さきほどの時間的な揺らぎと重なり、より複雑な揺らぎが生まれます。
そうすると、この周期性のある波に、演奏者や聴いている観客の体が反応します。
しかし、波には揺らぎがあるので、時々予測しきれず、期待した通りではないずれが生じることがある。
この体が予測した反応が期待通りだったときと、ずれがあったときのせめぎあいが快感となり、引き込まれるような感覚がうまれるのだそうです。
これがグルーブ感です。
時間的な揺らぎ+音量、音色の揺らぎ
↓
ある程度安定し、ある程度揺らいだ周期性の波
↓
演奏者・観客の体が反応する
↓
完全には予測できず、期待に対して時々ずれる
↓
期待通りとずれのせめぎあいが快感となり、引き込まれるように感じる
(グルーブ感)

ここでいう体の反応は、ノリノリになって踊りだしたりステップを踏んだりするものではないそうです。
もっと微細な、自分では気づかないような呼吸の変化や筋肉の小さな動きなのだとか。
面白いのは、そんな体の反応が演奏者にも起こって、それが演奏にも影響するというループのような現象が起こることです。
これは特に、ドラム、パーカッション、ベースで起こりやすいようです。
周期性のある演奏パターンが多いからでしょう。
また、リズムが完全に正確な場合(揺らぎがない場合)、完全に予測できるのでグルーヴは生まれません。
バンドのグルーヴ感

グルーヴ感は、ドラムやパーカッション単独の演奏でも生まれますが、バンド演奏では”より大きな場”が立ち上がって、さらに強力なグルーブ感が巻き起こります。
これは、ライブでは時々体験するのではないでしょうか。
自分の演奏で体験した方もいるかもしれません。
バンドでのグルーヴは、メンバーそれぞれが「同じ方向性の時間感覚」を共有しながら、それぞれ楽器ごとの揺らぎをもっていて、それらが重なった時に生じます。
面白いのは、楽器ごとに周期が違うことです。
リズムパターンを刻む楽器、フレーズを弾く楽器、メロディーを奏でる楽器など、それぞれの周期をもっています。
それぞれが違う周期をもちながら、同じスペクトルで全員が揺らぐ。
狙っていないのに、互いの演奏に反応して感覚的に同調するということですよね。
この大きなグルーヴの場が出来た時、観客はもちろん、プレイヤー自身も流れの渦に飲み込まれて、止められない感じになる、
そう話すプレイヤーは多いようです。
ノリとグルーブ感

グルーヴと似た言葉に、”ノリ”という言葉があります。
「ノリがいい」「ノリが悪い」とよく言いますね。
例えば「ノリがいい」というときは、楽しい、テンションが合う、気分が乗っているなどを意味しますが、これは心理状態を表す言葉です。
一方グルーブはこれまで説明してきたように、「揺らぎ・周期性・予測とずれ・体の反応」という、構造のはっきりした現象。
2つはまったく異なるものです。
ノリとグルーヴ感の関係としては、ノリを出そうとするとグルーブがなくなることを経験している演奏者は多いようです。
たぶん、ノリを出そうと意識的に操作することが、グルーヴを出すのに必要な無意識の体の同調を阻害するのではないでしょうか。
逆に、グルーヴがあると、ノリはあとからついてくるとも言います。
狙わず、ただ無心に演奏するのがいいということでしょうか。
グルーヴが生まれやすい演奏の条件

ここまで読んだ方は、じゃあ、どうすればグルーブを生み出せるか知りたい、と思われるでしょう。
(私もです)
ただ、薄々気づかれているかと思いますが、グルーヴは狙って生み出せるものではありません。
グルーヴを生むのに必要な揺らぎは、意図してコントロール出来るものではないからです。
その微細な揺らぎは意識してわかることはできない。だけど身体的にはわかるもの。
ただ、そうは言っても、結果的にグルーヴが生まれやすい演奏の条件はあります。
心理学や認知科学、神経科学の研究では、次のような時にグルーヴが生まれやすいということがわかっています。
- 力が入っていない
筋肉、関節が自由に動きやすく、無意識の体の反応が表れやすい - 揺らぎを出そうとしていない
- 音をコントロールしようとし過ぎていない
- 全体の音を聴いている
一方、ドラマーに言われているのは、やはり「グルーヴは狙うと出ない」というものです。
研究結果とも一致していますね。
グルーヴが生まれたとき、どんな演奏をしていたかということについての言葉には、このような共通点が見られます。
- 何かをしようとしていなかった
- ただ、ビートを刻んでいただけ
- ただ呼吸している感じだった
とにかく、意識せず、ただ無心に演奏するイメージでしょうか…。
それが一番難しそう。
でも、ただ何も考えず演奏するのとは違う気もします。
何か一定レベルの演奏はできるようになったうえで、無心に…ということでしょうか?
流れを感じると、流れに乗れる

私のパーカッションのレッスンでの体験なのですが、これに関連するのではないかな?と思われるものがあったので、最後にご紹介します。
正確なリズムを刻もうとすると流れが悪くなる
私は普段のレッスンでは、曲の音源を使って演奏をして、それを先生に見ていただいてます。
習い始めて2,3年頃まで、私は曲のビート(拍)を一つ一つ聴いて、それに合うように演奏していました。
でも、ある時先生に、「ひとつひとつの音を聴かないで、流れを感じて演奏して」と言われました。
つまり、一音ずつ合わせに行くと、遅れやすいし、全体の流れも悪くなります。
だから、曲の流れを感じて、その流れに乗って演奏する方がリズムが気持ちよく流れに乗って、よい演奏ができるということです。
実際、一つ一つの音を意識せず、流れを感じて演奏してみると、結果的にその方が曲に合って全体の流れが感じられる演奏になったようです。
練習していると、つい一音一音に意識が向いて、リズムを正確に刻もうとしがちになりますが、大きな流れを感じた方がいい。
「考えるな、感じろ」ということでしょうか?
リズムの流れを感じるとは?
リズムとは、音が時間軸の上に配置されたパターンだと思います。
譜面でみると、音符は紙の上に並んでいるけど、実際に演奏すると音は時間軸の上に並ぶわけです。
そういう意味では、リズム(ビート)を刻むというのは、時間の流れに対して次のビートが来ると感じたところで音を出すということ。
これには、曲のリズムをひとつずつ聴くのではなく、流れを感じることが必要になると思うのです。
流れが感じられれば、体が自然に周期を感じて、その周期に乗って音を出すことができるはずです。
そうすれば、音ひとつひとつを別のものではなく流れとして演奏できるし、曲に合わせるのではなく、自分がリズムを作っている感じにもなります。
私もまだまだ初心者みたいなもので、語りすぎかもしれませんが…
でももしかしたら、この感覚はグルーヴを生み出す演奏に近づく一歩になるのではないかと思ったので、書いてみました。
まとめ
よく言われる言葉だけど、実際どういうことかはあまり知られていない「グルーヴ」についてご紹介しました。
グルーヴ感は、科学的にはかなりわかってきているのに、狙っては生み出せないものです。
グルーヴ感の仕組みを理解してすぐに生み出せるようになるわけではないけど、自分が邪魔をやめた時、ふとグルーヴが生まれていることに気づくかもしれません。
この記事が、グルーヴって結局なに?どうすればグルーブ感が出るの?と思う方の参考になれば幸いです。







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